六年生を送る会 6年生出し物「走れメロス」(原作:太宰治、脚本:柴田克美)
≪配役≫
ナレーター( )( )( )( )
メロス ( )
ディオニス王 ( )
セリヌンティウス ( )
セリヌンティウスの弟子( )
娘( )
王のけらい達( )( )( )
メロスの声 ( )
老人の声 ( )
ディオニス王の声 ( )
コール隊A ( )( )( )
コール隊B ( )( )( )
コール隊C ( )( )( )
山賊たち ( )( )( )( )
ナレーター
( )メロスは平凡な男である。村で笛をふき、ヒツジと遊んで暮らしていた。
ただ、悪いことを許せぬ人間であった。
( )メロスは妹の結婚式のための衣装やごちそうを買いにシラクサの町にやって
きた。
( )町には子どもの頃からの親友、セリヌンティウスがいる。
町は不気味なほど、静かだった。
( )ふしぎに思ってメロスは通りがかりの若者に聞いた。若者は首をふって答え
なかった。
しばらくして老人に会った。老人も答えない。メロスは怒って老人のからだ
をゆさぶった。すると、
老人の声
( )王様は人を殺します。
メロスの声
( )なに?人を殺す?なぜ、人を殺すのだ?
老人の声
( )王様は人を信じないのです。
初めに王様は妹のおむこさんを、それから自分の子、妹とその子、つぎに皇
后を殺したのです。
メロスの声
( )では、王様は気がちがったのか。
老人の声
( )いいえ、ただ、人が信じられないのです。
メロスの声
( )あきれた王様だ。生かしておけない。
ナレーター
( )と、メロスは短剣をぬいた。メロスは平凡な男であるが不正を許せない。
メロスは城に出かけた。
( )そして、たちまちつかまってしまった。メロスはディオニス王の前に引き出
された。
兵士達に引き立てられ、メロス登場。王座にディオニス王あがる。
ディオニス王
( )この短刀で何をするつもりであったか、言え!
メロス
( )町を悪い王から救おうと思ったのだ。
ディオニス王
( )するとこの刀でわしを?だまれ、この百姓め。おまえを死刑にしてやる。死
刑に。
コール隊A
死刑だ、死刑だ!
メロス
( )わからずやの王よ、死刑は甘んじて受けよう。だが、一つ頼みがある。
ディオニス王
( )この期におよんで頼みとはふらちな!
だが、まあよい。言うてみよ。
メロス
( )村で私の帰りを待っている妹のために死刑を三日だけ伸ばして欲しい。
三日目には必ず帰ってくる。私は約束を守る男だ。
私が信じられないのなら、この町にいる私の無二の親友、セリヌンティウス
を身代わりに立ててもよい。私がもし、逃げたらあの友をしめころしてくれ。
ディオニス王
(独白で・・ディオニス王の声)
( )どうせ、こいつは帰ってこないに決まっている。このうそつきにだまされた
ふりをしてはなしてやろう。身代わりの男をしめころすのもまた面白い。み
なの見せしめになる。
(きっぱりと)
ようし、願いは聞き入れた。その身代わりを呼ぶがいい。三日目の日が沈む
までにもどってくるのだぞ。おくれたら身代わりの男を殺すぞ。命がおしか
ったらおくれてこい。どうぜ、おまえの心はわかっているのだ。
コール隊のざわめきのうちに、セリヌンティウス連れてこられる。セリヌンティウスは縛られ、メロスは台を降りて、ゲートを抜けると駆け足で門から消える。王と家来たちも台を降りる。コール隊座る。
ナレーター
( )メロスは出かけた。セリヌンティウスは縄を打たれた。
( )メロスは、その夜一睡もせず、十里の道を急ぎに急いだ。村に着いたのは、
明くる日の昼前。一眠りしてさめたのは夜だった。
( )妹と婚約者を説きふせて、翌日の昼に結婚式をあげさせることにした。結婚
のお祝いのさなか、メロスは、ふと、王との約束を忘れて、このまま平和に
村で暮らしたいと思った。
( )だが、次の瞬間、妹たちに分かれる決心をしていた。
メロスの声
( )妹よ、私は大事な用事でシラクサの町に行かねばならぬ。お前の兄が1番嫌
いなことは、人を疑うことだった。それを忘れないでほしい。そして、お前
の兄のみにどんなことが起こっても、誇りを失わないでほしい。
ナレーター
( )メロスは翌朝薄暗いうちに目が覚めた。雨がひどくふっていた。メロスはぶ
るぶると腕を大きくふってから、雨の中を矢のように走り出した。
激しいドラムの連打。力強いストライドでハードルをとびこし平均台を駆けぬけ木立をかいくぐって走りつづける。
メロスの声
( )おれは、今夜殺される。名誉のために。ふるさとよ、さらば。
コール隊B
走り、走る!
コール隊C
メロスは走る、矢のように!
トラックを2周ほどしてメロスは走るのはやめ、フィールド内をぶらぶら歩きはじめる。
ナレーター
( )メロスは村を出て野を横ぎり、森をくぐりぬけ、隣村に着いた。ほぼ半分の
道のりだ。町へはゆっくり間に合う。メロスはぶらぶら歩き出した。
( )しばらく歩いてメロスの足ははたととまった。昨日からの豪雨で、川がはん
らんし橋が流されている。
メロス
( )ああ、しずめたまえ、荒れ狂う波を。時はこく一刻と過ぎていきます。太陽
もすでにま昼の高さです。あれが沈んでしまわぬううちに城に行き着くこと
ができなかったら、あの私の良い友達が、親友が私のために殺されるのです。
濁流の表現。
ナレーター
( )今はメロスも覚悟した。泳ぎきるよりほかない。
メロス、濁流の中におどり込み泳ぎに泳ぐ。
やっとのことで対岸にたどり着く。そして、すぐに先を急ぐ。しばらく走って荒い息でやっと峠を登り切り、ほっとして立ち止まったとき、手に手に棒を持った山賊たちが踊りでる。
山賊たち
待て、待て、待てえ!
メロス
( )何をするのだ。私は、日の沈まぬうちに城に行かねばならぬ。放せ。
山賊たち
( )持ち物を全部おいていけ!
メロス
( )私には命のほかには何もない。そのたった一つの命も、これから王にくれて
やるのだ。
山賊たち
( )その命をもらおう。
メロス
( )さては王の回し者だな。
(と言いざま、棒を奪い、殴りかかる。やがて山賊たちをけちらし、また走り始める。しばらく走るうちに、次第に疲れ、めまいを感じ立ち止まる。2、3歩よろよろと歩くが、ついにがっくりと膝をつく。メロス天を仰いで悔し泣きになく。
コール隊B
メロス、メロス。真の勇者メロスよ。今ここで動けなくなってどうするのだ。愛する友が、やがてお前のために殺されるのだ。
メロスの声
( )ダメだ、だめだ。私は努力をした。約束を破る心はすこしもなかった。神も
ごしょうらんあれ。私はこの大事なときに、精も根もつきはてたのだ。私は
不幸な男だ。私はみんなに笑われる。私は友をあざむいた。中途で倒れるの
は、初めから何もしないのと同じだ。ああ、もうどうでもいい。セリヌンテ
ィウスよ、許してくれ。本当に良い友達だった。君が待っていると思うとた
まらない。でも、私は走ったのだ。濁流を越え、山賊をやっつけて……。だ
が、私は負けたのだ。だらしがない。笑ってくれ。王は私に、ちょっと遅れ
てこい、そうしたら友を殺してお前を助けてやるともいった。そうなったら、
私は死ぬよりつらい。だが、眠い。俺は裏切りもの。そうだ、このまま一生、
村で羊をかい、妹たちと平和にくらそう。正義だの愛だの、考えてみればく
だらない。眠い。悪魔がささやく…。ああ、おれは裏切りものだ。もう、ど
うとでもなれ。
(メロス、うつぶせに倒れて寝込む。)
メロス
( )おや、水、水の音が聞こえる。
(よろよろと立ちあがり、水に近寄って手ですくって飲む。泉の表現、メロスしっかりと立ちあがって、生き返ったぞ。歩ける。日没までにはまだ時間がある。そうだ、私は信じられている。走るのだ。(といって走り出す)
コール隊A
走れ、メロス!
コール隊B
メロス、真の勇者よ!
コール隊C
走れ、走れ!
コール隊全
走れ、メロス!
ナレーター
( )道行く人を押しのけ、はねとばし、あるいは酒盛りのまっただ中を駆けぬけ、
メロスは風のように走る。(いつの間にか着物は破れ、上半身がほとんど裸に
なっている。)
コール隊A
走れ、メロス!
コール隊B
急げ!メロス!
コール隊C
急げ!、走れ!
コール隊全
走れ、メロス!
シラクサのゲート見えてくる。刑場では死刑の用意ができている。十字架にくくりつけられたセリヌンティウス、首縄をふる王のけらい。王が台に上り、まわりのコール隊も立ち上がる。と近くに男、現れる。
セリヌンティウスの弟子
( )メロス様
メロス
( )(走りながら)だれだ?
セリヌンティウスの弟子
( )あなたのお友達、セリヌンティウス様の弟子でございます。
(メロスの裾にすがって)もう、だめでございます。むだでございます。もう
あの方をお助けになることはできません。
メロス
( )いや、まだ日は沈まぬ。
セリヌンティウスの弟子
( )ちょうど今、あの方が死刑になるところです。あなたは遅かったのです。お
うらみ申します。もう少し、もうちょっと早かったら……
メロス
( )いや、まだ日は沈んではおらぬ。それに、間に合う間に合わぬの問題ではな
い。今は、人の命も問題ではない。私は、もっと大事なことのために走って
いるのだ。ついてこい。
セリヌンティウスの弟子
(メロスについて走る。)
コール隊A
日が沈む。
コール隊B
日が沈む。
コール隊全
走れ、メロス!速く、速く!
(メロス、ゲートをくぐり、まっすぐに城へ。王座を取り囲むコール隊のまわりには、濁流のグループ、山賊たちが群衆となって集まっている。メロス、群衆をかき分けながら叫ぶ。)
メロス
( )間に合った!わたしだ。メロスだ。殺されるのは私だ。その人を殺してはな
らない!
(人ごみをかき分けかき分け、やっとのおもいではりつけ台に上り、セリヌンティウスの体にだきつく。群衆のどよめきがひろがる。)
コール隊A
メロスだ。
コール隊全
メロスだ。
コール隊B
許せ。
コール隊全
許せ!
コール隊C
男を許せ。
コール隊全
セリヌンティウスを許せ。
(セリヌンティウスの縄がほどかれる。メロス、友の手をにぎって)
メロス
( )セリヌンティウス!
セリヌンティウス
( )メロス!
メロス
( )私をなぐれ!力いっぱい。私は、途中で一度、君を裏切ろうと思った。なぐ
ってくれ。
(セリヌンティウスうなずき、力いっぱいメロスの右ほおを殴る。なぐってから優しく)
セリヌンティウス
( )メロス。私を殴れ。同じくらい音高く、私を殴れ。私は、この3日の間、た
ったの一度だけちらと君をうたぐった。私をなぐってくれ。(メロス、うな
ずき、セリヌンティウスの右ほおを打つ。二人ひしとだきあい、うれしなき
に泣く。)
音楽、静かに流れる。王、二人の様子をまじまじと見つめている。やがて、二人に近づいて、
ディオニソス王
( )お前らの望みはかなったぞ。お前らは、わしの心に勝ったのだ。わしは初め
て人を信じることの美しさを知った。どうか、わしをお前らの仲間に入れて
くれないか。
(群衆から歓声と拍手が起こる。二人うなづく。やがて一人の少女が緋のマントをメロスに捧げる。メロスまごつく。)
セリヌンティウス
( )メロス、君はほとんど裸じゃないか。この娘さんは、君の裸をみんなに見ら
れるのが恥ずかしいといっている。
メロス、マントを受け取り、体をおおうとすっくと立つ。再び拍手。
両脇に王とセリヌンティウスが並び、三人手をつないで群衆の歓呼に答える。
音楽次第に高まる。
・・・・・・・・・幕・・・・・・・
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